病院広報は、患者とのコミュニケーション(情報の発信と広聴)で、円滑な健康生活が送れるように支援することで住民に認知され、患者が積極的に治療に参加しエンゲージメントを高めることが目的です。
広報の目的を達成するために病院パンフレットを作成したり、ホームページを設置したりしていますが、近年はこれだけでは十分ではありません。
病院広報の目的は宣伝のように発信のみではありません。例えば病院広報で職員や住民の意見や患者の声を聴いてより良い方向に導くものです。医療提供が公共の眼に晒されることによって医療機関の自浄作用が強化され、厚生労働省の方針にもあるように職員の意識はよりオープンで安全な医療になることを目指しています。これらのことが「透明な患者中心の医療」を提供する上で重要な項目になっています。
すなわち医療的情報提供は当然として、患者の心理的、社会的、経済的な行動にもフォーカスする必要があります。
病院広報は次のような10の役割と目的があります。この病院広報の内容はステークホルダーによって異なります。例えば特定機能病院では学生や教育関係者などさらに多くのステークホルダーに留意することになります。
-
患者が診療方針や経営理念の理解向上によりコミュニケーションおよびエンゲージメントを強化
-
患者とステークホルダーの認知度向上し、ブランドを確立する事でエンゲージメント強化(マスコミ含む)
-
患者へ医療情報提供し、患者教育や知識で患者満足度向上からペイシェント・エンゲージメント改善
-
適正な医療情報とインフォームド・コンセントで患者の医療への参加促進
-
地域医療機関や関係者との連携と信頼関係強化
-
地域住民とのコミュニケーションとエンゲージメントの向上でアンバサダー戦略により自院の認知度強化
- 経営者に対して外部環境分析と広報効果の評価説明
-
職員に経営方針の浸透させて意識改革による組織活性化とチームワーク強化
-
看護師・医師採用の情報発信
-
危機管理対策(大規模災害、新型コロナウィルス感染症のパンディミックを含む)
病院広報(=発信)という認識の広報担当者の方がいまだに多くいます。しかし現在は「コミュニケーションとPR」となり、双方向での疎通が重要です。役割と共に枠組みを構築することで広報・PRのリテラシーを強化することも必要です。
近年は日本医療機能評価機構の機能評価をクリアする条件にもなっています。
2020年の新型コロナウィルスのパンデミック時には、本来危機管理対策が展開されリスク・コミュニケーションが活発にされなければならないところですが、行政をはじめ医療機関も医療業務に集中しており危機管理対策やBCP(事業継続計画)は必ずしも機能していたとは言い難い部分がありました。
新型コロナウィルス感染症禍において、患者だけでなく職員も先が見えない不安で業務に集中できない場面も報道されていました。この場面で正確な情報や経営者の意志や方針がきちんと伝わることは重要な枠組みです。
本来感染症対策は想定内のはずですが、パンディミックのような広範囲の状況は想定されていないケースが考えられます。陽性者の多くが医療や介護施設であることからも、危機管理の重要性を再認識し、病院広報・PRは経営方針や危機管理対策に沿って修正または更新することが必要です。
また情報発信の状況はマスメディア以上にインターネット上の情報が世界中から配信されており、医療の情報発信とコミュニケーションの重要性を改めて見直す機会と考えられます。
【更新日】2020.6.3
【参考】
0 Responses