病院広報・PR 戦略2019年|医療マーケティングとコミュニケーション

高齢者増加、健康・医療情報へ関心の増加を背景にして、医療政策は地域包括ケアシステムへ向かっており、地域や職員への啓発のために今年度の診療報酬改定で導入・推進されている下記の項目に関する広報・PRが必要です。

診療報酬改定で「かかりつけ医機能を有する医療機関における初診の評価」「介護医療院の創設」「遠隔医療推進」や急性期医療などが変更追加されて、自院の対応を速やかに住民および周辺医療機関に広報・PRする事は住民にとっても有益であるばかりでなく、経営計画を円滑に推進する上でも重要です。対応が遅いと適正な病床稼働率が得られないだけでなく、職員との齟齬が生じることもあります。

広報・経営企画担当者は円滑に経営計画達成のために、こうした経営環境の変化を分析し医療政策を始めとして経済環境や医療技術の進化、情報システムの向上などの影響に留意して患者のニーズの把握することを求められています。

ご存知のように患者獲得を確実にしていくためには住民とのつながり(またはエンゲージメント)や職員とのコミュニケーションを強化することは、患者獲得のみならず医療サービス等の業務改革を円滑に推進していくために必須です。

次に上記をふまえて、病院広報・PR・マーケティング戦略2019年についてまとめてみました。

【内容】

  1. 外部環境の変化
  2. 病院経営における広報・PRの課題
  3. 患者の受療動向と病院広報
  4. 広報およびインターネット技術の進化
  5. 人材確保と院内コミュニケーション

1. 外部環境の変化

福祉医療機構の調査によると、病院経営において一般と療養病棟は「増収減益」で、医業利益率は前年度から 1%近く低下したと報告、厚生労働省の病院報告によると病院の月末病床利用率は77.1%と減少傾向にあります。

またシニアのスマートフォン利用率が増加61.5%(MMD研究所)したことによる各患者への情報の流れを考慮することが必要です。個人レベルでのスマートフォンの普及と情報量の増加により従来のクチコミや情報の流れに変化が起きおり、患者への説明にはより一層の準備が必要になります。

さらに患者調査(厚生労働省26年)による受療率は0歳児を除けば60歳以上の入院・外来共に多くなってはいますが、年次推移では特に入院はピークから40%以上少なくなってきています。現在の病床数が続けば各医療機関の病床稼働率は低下し、医療機関によっては病床数削減を検討することを避けられません。

一方、医師の業務環境は厳しく働き方改革で労働時間の短縮を迫られています。優秀な医師の確保は都市周辺ではより顕著な課題となります。
参照:2014年(H26)患者調査概況

従って医療サービスの変更・追加は早い時期から対応し、患者や医療関係者への啓発を推進して患者獲得までの時間を短くすることが必要です、また新しい病棟やサービスのための人員配置について職員への説明が後手になると運営に支障が出ますので、医療サービス提供に対応した広報・PRは病院の内外に対して早期に実施することが必要です。
参考:<日経新聞>過剰ベッド減らぬ病院 5年で14%増、医療費は膨張

2. 病院経営における広報・PRの課題

平成30年度の診療報酬改定が行われ診療報酬本体は+0.55%となりました。しかし上記のように外部環境は変化しており、病院経営はますます厳しくなっていくことが予想されます。2019年に広報・企画部門が対応する課題は下記のものがあります。

  1. 外来、入院患者の獲得(病床稼働率改善)と慢性期疾患の受療継続に関する広報
  2. 地域包括ケアの推進と地域医療機関との連携
  3. 入退院支援等について患者・職員との患者コミュニケーション強化
  4. 専門外来の患者獲得
  5. 医師・看護師・理学療法士・薬剤師採用募集
  6. 地域連携室の業務支援のためのPR
  7. 地域住民との信頼関係構築
  8. デジタル・マーケティングの推進とコミュニケーション強化
  9. 看護師・医師の働き方を改善するコミュニケーション強化
  10. 広報・企画担当者の獲得と育成
  11. 防災・危機管理と対応

上記のように、広報・企画部門の課題は情報の発信のみならず、情報発信のために他部門との協力・連携が必要になります。このように院内がまとまって情報を整理発信する事は必須です。このように広報・PRの技術的なことだけでなく、経営部門の方針や取り組みなどの把握に加えて、関係部門と一緒に患者行動に関心を持ち、分析していくことが必要とされています。

新しい項目としてデジタル・マーケティング(インタネットやソーシャル・メディアなど)をあげましたが、ソーシャルメディアは多くの選択肢がありますので、戦略的に自院に合った枠組みを考えることが必要です。
参照:病院経営の課題2018年

3. 患者の受療行動と病院広報

近年は患者視点の医療を提供を実現する上で高い医療技術のみでなく患者の受療行動の理解と業務への展開が必要です。

患者中心の医療を考えるときに患者の高齢化や情報機器の発達に加えて、医療費増加で外来患者の減少が起きたり、患者の声もインターネットを通じて拡散しやすくなっています。一方医療提供側でも接遇という視点だけでなく関係者全員にわたり患者中心の医療の考え方が拡がっています。このように病院広報・PRにおいては患者との各接点において広報担当者がどのように情報提供をするかを理解する必要があります。

すなわち、患者の受療行動を調査データや自院のアンケート調査などから、ペイシャント・ジャーニーにそって患者の行動に影響を与える要因を把握することが求められます。このような対策は患者確保のみならず、患者満足度にも大きな影響します。このように良い患者体験(ペイシャント・エクスペリエンス)をデザインすることが重要になりました。

こうした患者行動を理解するための主なポイントは以下の通りです。

  1. マーケティングとオンライン広報・PR強化
  2. 自院の機能(役割)の差別化
  3. 患者教育・アドヒアランス改善のための患者・家族への継続的な情報提供と信頼関係構築

広報・PRでは、都市部と周辺地域では異なる患者行動があります。都市部においては選択肢が多いことで患者は診療科目だけでなく、実績や治療法までにも関心を持って調べます。現実には患者にはほとんど見分けができない内容で情報を発信していることもしばしば見受けられます。

オンライン(インターネット)で情報を探す人たちとっては一般的に知名度がある病院でもオンライン上での認知度が低いと利用する対象となり得ません。それに気づかずに既存の発信方法や紹介ルートばかりに注目して、視野を広げた患者獲得対策をしていないことなどが見受けられます。

自院の病院情報は周辺の医療機関と同じ内容の情報や情報提供方法では新規の患者には届きません。病床稼働率改善には広報・企画・患者相談室を含む全ての職員が参加して患者体験(Patient Experience)を改善しエンゲージメントを最大化することが必要です。

患者体験を改善するには、接遇のみならず患者行動(ペイシェント・ジャーニー)を理解し患者が必要な情報を適宜提供できるように広報担当者や各職員が取り組むことが必要です。

4. 広報およびインターネット技術の進化

現在のスマートフォンやPCを経由したオンラインの医療情報は患者行動に影響しているのでしょうか?

近年の利用メディアの変遷、Googleによるホームページへの影響、スマートフォンの高い普及率によりホームページの制作技術は大きく進化しております。これらの医療情報は多くの患者または疾患の疑いがある人々が閲覧しています。そのメディアの種類も多くなりホームページだけというよりもオンラインでのデジタル・コミュニケーションの技術へと変化しています。

コミュニケーションの形は一方的な情報提供の広報からPR、そしてつながり(エンゲージメント)へと進化し、技術的にはホームページからデジタルメディア(ウェブページを含むデジタル画像、デジタル動画、ソーシャルメディア、データやデータベース、デジタル音声、電子書籍)へと移行しています。特に動画(ビデオ)がスマートフォンなどのデバイスの性能向上で手軽に撮影ができるようになりました。ユーザーの動画への関心も高く、多く利用されて今後も増加することが予想されています。

近年の病院広報・PR・コミュニケーションを強化するインターネット上の取り組みは次のものがあります。

  1. 病院認知度向上のためのデジタル・メディア(動画を含むソーシャルメディア等)の利用
  2. 医療情報を患者視点でわかりやすく提供する組織作りと枠組み
  3. 地域医療連携の広報・PR用コンテンツ制作
  4. わかりやすい健康情報の提供と啓発用のコンテンツ制作
  5. 患者体験、エンゲージメントの向上のためのストーリー(テリング)
  6. 患者の声を把握するための広聴(ソーシャルリスニング)
  7. 感染症や転倒に関する健康および医療安全の啓蒙のためのコンテンツ制作
  8. 理念・方針の啓発のためのコミュニケーションツールとしてのコンテンツ制作
  9. 医師・看護師採用支援のための広告・PRコンテンツとGoogle対策
  10. 患者情報(GDPRなど)管理のためのコンプライアンス整備

近年の広報では「患者中心の医療」という枠組みに、さらにペイシェント・ジャーニーやペイシェント・エクスペリエンスを加えて、ひとり1人の患者に合わせて医療情報のみならず、患者の時系列での必要な情報を患者に合わせて情報発信が必要であるとの認識が増えてきました。

インターネットのSEOなど検索対策も必要ですが、自院の経営理念に合った情報発信のレベルを上げて、良い患者体験をできるようにしていくことが必要です。すなわち、各患者のペイシェント・ジャーニーを理解していることが重要です。しかしこれらの情報発信には多くの時間がかかりますので、徐々に発信力を強化していくこととその自動化を医師や患者相談室など各部門と一緒に広報の枠組みを作ることが必要です。

広報は情報発信同様に「広聴」の重要性はさらにましています。広聴(ソーシャル・リスニング)では医療の各サービスについて他院がどのように期待し、患者からはどのように期待されているのか、または本当に必要なサービスは何かなどの情報は、自院の戦略を見直すきっかけになったり、業務改善の糸口になります。従来の広報は発信力だけが注目されてきました。近年は患者や社会(ソーシャル)の変化を分析しながら、患者との信頼構築またはエンゲージメントを強化し、自院を選んでもらう考え方がマーケティングの中心になっています。

5. 人材確保と院内コミュニケーション

人材確保や院内コミュニケーションの改善は広報担当者の直接の役割ではありませんが、経営方針に沿った院内広報はこれらの業務を支えることで効果的な採用や職員とのコミュニケーションを改善することができます。広報のご担当者から病院経営者への適切なフィードバックは職員獲得経費低減や患者獲得、組織力(チーム力)強化に有効です。

人材確保は病院経営において優先度が高い事項ですが、自院を差別化を明確にすることなしに宣伝しているケースが見受けられます。採用側の希望だけを記述しても応募者には取り入れられません。その結果、応募者獲得に困難が生じていることがあります。このようなケースでにホームページなどデジタルメディアが大きな役目を果たしていますので、広報の視点から効果的な募集情報を発信することを支援すると効果的な結果を得ることができます。

まずは応募者の就活行動をよく分析して、自院の採用推進を図ることがポイントです。問合せが増加しない、問合せ後に面接まで進まない、または採用に至らないことが多い場合には、原因と課題の究明が重要です。給与や福利厚生の改善や。Google検索対策(SEO)も必要ですが、ホームページから問い合わせや申し込みが簡単にできる仕組みづくりや応募者に訴求する内容を検討することは最優先にすることも効果的です。

最近Google社の「おしごと検索」が従来の紹介会社の枠組みを超えたスキームが紹介されております。この仕組みを利用することで、看護師や医師の応募者への認知を高めることが期待され、採用において効果的な手法となっています。

院内コミュニケーションで経営方針が各職員に浸透することで、業務が円滑に推進されるだけでなくチーム力強化につなげることを目指すことができ、その結果として患者サービスが改善して安定した経営を目指すときに有効です。さらに職員一人ひとりが業務改善や自己啓発にも注力して、チームワークと共に一人ひとりの成長を推進するよいコミュニケーションが構築されます。

参考資料:デジタルと広報戦略2017年 新しい患者像と広報の潮流
平成30年2月28日の第60回社会保障審議会医療部会が医療広告ガイドライン(仮称)を参考資料1-2として発表。

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