病院、医療機関でFacebookやTwitter、Youtubeなどを広報PRに利用することが増えてきました。その状況と活用方法についてまとめました。
病院の広報や宣伝について意見や認識の違いがあるなかで、医療機関でも一般企業のようにソーシャルメディアを広報に利用するようになりました。さらに情報システムの進化や新型コロナウイルス感染症がオンライン情報にアクセスする機会を増やすことに拍車をかけています。(2020.7.3更新)
日本におけるソーシャルメディアとスマートフォンの利用率は増加の一途をたどり、総務省の平成30年調査ではアプリによっては82.3%のユーザー利用しています。
病院(国内)のFacebook利用状況
医療機関における利用はまだ少なく、運用のノウハウの蓄積中の状態です。主なサイトは下記の病院があります。(非公式ページは除いてあります)
- 国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター
- 水戸協同病院 総合診療科
- 東北大学病院
- 鶴巻温泉病院
- 東京医科大学 小児科
- 亀田総合病院
- 武田綜合病院
- 聖路加国際病院
- 長崎みなとメディカルセンター
- 香川県立中央病院(診療部)
米国病院のFacebook利用状況
- Mayo Clinic
- Cleveland Clinic
- Johns Hopkins Medicine
- Harvard Medical School
- Akron Children's Hospital
米国に比較すると国内の医療機関はソーシャル・メディアを効果的に使っているところは上記を除くと多くはありません。保険制度や医療社会学的な見地が異なることも理由ではと推測します。
活用方法の例(米国)
日本ではまだお知らせ、研修医募集やイベントの写真など投稿することがほとんどですが、米国では下記の目的で運用をしています。
- 患者または地域住民とのコミュニケーション(各種情報提供等含む)
- 看護師、医師の募集
- 外国人患者への情報提供・PRとコミュニケーション
- 患者サービス(各患者の状況に合わせたコンサルティングなど)
- 患者会の運営(会員制)
- 健康啓発
- 患者教育
- 経営理念の浸透およびマーケティング
- 医療関係者と患者間の情報共有
- 広報・広聴(患者・消費者の意見に傾聴)
ソーシャルメディアの利用目的(総務省情報通信白書平成23年)
少し古いデータですが、この時点で「自分や家族・親戚の健康上の不安・問題が解消した(17%)との調査です。どのようにホームページとソーシャルメディアを使い分けているかは記述されておりませんが、ホームページよりも友人のように身近な人からの情報を得て、不安や問題点を解消しているように思われます。
医療関係者にとっては患者が分からないことは医師や看護師に聞けば素人に聞かなくてもいいと考えますが、患者によっては質問することを躊躇したり、遠慮したりします。また全体の内容が理解できない、あるいは予想に反した悪い結果の時には状況を理解するよりも患者自身の今後のことを考えているので頭に入っていないことがあります。
患者は論理的な情報だけでは不安は解消せず、友人のように自分の年齢、家族、経済的なことを理解している人のアドバイスや情報には耳を傾ける傾向があり、その情報によって不安が解消することがあります。
また重要なことはソーシャル・メディアでも検索機能を使うユーザーが多く、2019年にTwitter社がマーケティング学会で発表した内容では検索機能を67%が利用しているとのことです。これは通常はソーシャル・メディアに置いてタイムラインしか閲覧しないと思われていますが、実際にはより自身の関心を見つける使い方をしていることになります。即ち医療機関がTwitter等ソーシャル・メディアを利用しないと機会喪失が起きていることにほとんど気がついていません。
活用の障壁
日本でFacebookやTwitter、Youtubeなどソーシャルメディアを導入するときの障壁は次のことが想定されますので事前の対策が必要です。
- ソーシャルメディア運用上の目標、設定メディアの選定と戦略策定
- 全職員とのコミュニケーションおよび情報発信に関する啓発
- 運用を継続する仕組みづくり(PDCAと情報共有)
- ホームページとは異なるコンテンツ作成の仕事量増加
- 担当者の育成と管理職のソーシャル・メディアのリテラシー不足
- ソーシャルメディアガイドライン設定
- 新型コロナウイルス感染症や情報機器の変化などパラダイムシフトが理解されていない
- パンディミック、災害時、緊急時のコミュニケーション
注意:SNSとソーシャルメディアとは意味が異なります(SNSはLINEのようなクローズドなネットワークであり、FacebokやTwitter、Youtubeはソーシャルメディアになり、発信するメディアという意味でネットワーキングとは異なります。SNSはソーシャルメディアの一部となります。ソーシャルメディアと言う言い方は、ペイド・メディアなど同様にメディアのひとつということになります。
まとめ
医療ソーシャルメディアはホームページの延長線上にあるのではなく、扱う情報には文脈、前後関係、事情、背景などが刻まれております。従ってホームページのようにいわゆる情報だけとは扱われ方が異なります。さらにソーシャルと言われるようにコミュニケーションは公正で透明性があり社会的視点が必要になります。
またソーシャルメディアとスマートフォンの普及に比較して、医療関連ではソーシャルメディア活用は進んでいませんが、新型コロナウィルス感染症のパンデミックでは多くの医師を始めとする医療関係者が発信し、情報の投稿、情報の説明、是正、感謝や激励のコミュニケーションが多く見られているように変化が表れております。また人との接触が困難になり、インターネットの利用が増加しています。そのときに長い時間利用しているのがホームページではなくソーシャルメディアです。
もちろんソーシャル・メディアで全てのコミュニケーションが完了するわけではありませんが、オンライン診療のように従来はなかなか進まなかったICTの技術も環境によって理解が深まっていることがわかります。
それでも病院広報、企画担当者のソーシャルメディア・リテラシーは米国に比較して少なく、新型コロナウィルス感染症禍でのコミュニケーションも十分ではありません。従って患者と医療機関間のコミュニケーションが改善しません。多くの機会喪失を起こしている可能性があります。
ソーシャルメディアの利用に伴うリスク管理については、多くの場所で書かれていますので割愛します。しかしそのリスクは結局のところリテラシー不足であり、ソーシャルメディアを理解していないことから起きています。医療機関がソーシャルメディアを採用するかしないかは別で、ソーシャルメディア上では特定の医療機関に関連する投稿が既に存在しています。
敢えて典型的なソーシャルメディアのリスクの一つとして挙げると、ソーシャルメディアでは単に医療知識の発信だけではなく、患者の心情や行動、社会的な意味などを同時に扱います。従って閲覧者が情報の一部を切り取って、個人の理解の範囲・方法(フレーミング)で情報が拡散する可能性がありますので元になる情報には注意を払う必要があります。
このことが一般的にはソーシャル・メディアの情報の信頼度が低いと見做されることがありますので、発信者はそことを踏まえて信頼を構築する必要があります。
医療機関及び医療関係者がソーシャルメディアを利用する時には、個人的な利用と全く異なることを理解し、リスク管理をしながら恐れずにその枠組みを構築することがポイントです。
参考:
- 病院広報戦略
- 特定機能病院のブランディングと広報戦略の見直し
- 新しい患者像と広報の潮流
- デジタルと広報戦略2017年
- 医療機関のTwitterの便利な使い方13項目
- 2年間で病院案内ダウンロード数3.5倍
- デジタル広報
●㈱日本医療ソリューションズについて
弊社は医療機関におけるソーシャルメディアの運用支援をしております。
各医療機関の目的に合わせて、各種の課題について過去の知見から最適な運用を構築いたします。特に日本国内はもとよりMayo Clinicやオーストラリア私立病院協会の運用例(ベストプラクティス)を参考に最新の技術と運用を提案致します。
リスク管理については長年の経験から予防的対策ができますので堅実な運用が望めます。医療機関のソーシャルメディア運用についてのご相談は下記までご連絡下さい。
【更新日】2020.7.3
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