病院の広報戦略2018年

平成 30 年度の診療報酬改定は6年に一度の診療報酬と介護報酬の同時改定となります。この改定は地域包括ケアシステムへの移行の要と位置づけられています。地域包括ケアでは広報・経営企画担当者にとって診療報酬と同時に患者や関連医療機関との関係構築または修正が必要となります。

【内容】

診療報酬改定の基本方針は既に示されております。課題として、患者が安心・納得できる医療を受けられるようにするためには、診療報酬制度を分かりやすくし国民全体の医療制度に対する理解を促し普及啓発も含め、国民に対する丁寧な説明が必要としているとしていますが、医療行政を説明するのは簡単なことではありません。加えて自院の経営戦略を伝えていくのは、従来のような手順では時間がかかるだけでなく、想定するほどは浸透していきません。さらに患者とのコミュニケーションにはより多くの時間が必要となります。

また新しい医療サービスを始める、または拡充するには関連の医療・介護事業者との関係も重要となります。

最終的には患者との接点につながる情報提供は、患者ばかりではなく医療関係者や職員への医療サービスに関する啓発や経営情報提供が医療制度の理解に資するコミュニケーション・PR業務になります。

地域包括ケアシステムの構築には基盤整備に加えてICTの活用による医療連携の課題がありますが、自院の病床構成の情報などは医療連携の初めに必要となるものです。これらの情報は適宜ホームページやその他のメディアで発信することが必要となります。また高度急性期医療や遠隔医療などの新しいサービスの認知には各医療機関から発信していく事が必要です。

ここではさらに現在の課題と具体的な対策について検討してみました。

【病院経営の課題】

広報・企画部門が関係する病院経営の一般的な課題は下記のものが考えられます。

  1. 医療サービス
  2. マーケティング
  3. 患者・職員とのコミュニケーション
  4. 危機管理

【病院収益状況と対策】
福祉医療機構の調査によれば、一般と療養病棟は「増収減益」で、医業利益率は前年度から 1%近く低下したと報告しています。その中で人件費の増加は医療従事者確保の点から避けられないので、病床利用率の確保と加算の取得が不可欠としています。

病床利用率、即ち患者の確保については、現状多くの医療機関で同じようなアプローチ、または楽観的な見方で対応している担当者が多くみられます。4月の診療報酬改定では変化していますので、患者確保には従来の流れに加えて強固なマーケティング視点での対応が必要です。

【患者の受療動向と患者中心の医療による病院広報】

従来の接遇という視点だけでなく関係者全員にわたる患者中心の医療の考え方が拡がっています、このような考え方の変化は患者確保の対策としての病院広報にも大きな影響がでます。

病院広報の課題および目的は、

  •  理念の明確化
  • マーケティング強化
  • 診療報酬改定対策
  • 患者数増加/認知度と信頼の向上
  • 紹介率・逆紹介率向上
  • 職員の定着率
  • ステークホルダーとのコミュニケーション改善
  • 患者教育・アドヒアランス改善と患者・家族への情報提供
  • 医療関係者向けの情報公開で円滑な業務運営・地域の医療・介護連携
  • 危機管理

インターネット上のホームページの内容は周辺の医療機関と同じ記事・説明がよく見受けられます。患者からはほとんど見分けができないほど同じサービス内容を発信しています。

疾患の説明や病棟の説明において中には情報発信による誤解を恐れたり、患者の受療行動をよく理解しないことなどで、自院のサービスを詳細に記載しない経営者がいることは推測できます。

しかし現在のオンライン(インターネット)で情報を探す人たちとっては知名度がある病院でも各医療サービスは認知が低いことがあります。それに気づかずに既存の発信方法や紹介ルートばかりに注目して、視野を広げた患者確保対策をしていないために患者確保が進展しないことがあります。

病床稼働率改善には広報・企画・患者相談室を含む全ての職員が参加して患者体験(Patient Experience)を改善しエンゲージメントを最大化することが必要です。謂わゆる病院情報は横並びのサービス情報や情報提供方法では新規の患者には届きません。

患者体験を改善するには、接遇のみならず本来の「患者中心の医療」を全職員が情報を共有しながら取り組むことが必要です。 その理由や状況は下記に掲載します。

【広報およびホームページ技術の進化】
患者の利用メディアの変遷、Googleによるホームページへの影響により過去数年はホームページの制作技術は大きく進化しております。

  1. ダイレクトコミュニケーション(スマートフォンの拡大)
  2. 認知度向上(患者との接点増加等)
  3. 健康に関心を持った患者体験
  4. データ分析による受療動向の理解と対策
  5. 院内コミュニケーション

同じ患者でも状況や程度が異なりますので、各患者に合わせた情報発信が必要です。具体的には検索対策は重要ですが、それぞれの疾患の患者のペイシェントジャーニーを理解していることが重要です。

しかしこれらの情報発信には多くの時間がかかりますので、徐々に発信力を強化していくこととその自動化を医師や患者相談室などと一緒に推進することが必要です。

広報は情報発信同様に「広聴」の重要性はさらにましています。広聴(ソーシャル・リスニング)では医療の各サービスについて他院がどのように期待し、患者からはどのように期待されているのか、または本当に必要なサービスは何かなどの情報は、自院の戦略を見直すきっかけになったり、業務改善の糸口になりします。

従来の広報は発信力だけが注目されてきました。近年は患者や社会の変化を分析しながら、患者との信頼構築またはエンゲージメントを強化し、自院を選んでもらえる状態にするマーケティングの中心になっています。

インターネットの技術的なことも必要ですが、自院の経営理念に合った対応をインターネット上でも表現していくことが求められています。

患者・住民の声は窓口などで対応していますので、大半の医療機関はインターネット上の意見や口コミには関心を持っていません。しかし自院についての書き込みが行われても何ら対応しない医療機関など危機管理では危うい面があります。インターネットの利用が一般的になった今日、オンライン情報のリテラシーは広報・経営企画ご担当者が正常な業務を遂行するために必須です。

これらのリスク管理のうえでインターネット(オンライン)の活用が推進できます。また下記のように今年から厚生労働省の「ホームページに関するガイドライン」が改定されましたので一読することをお奨め致します。

 【広告規制におけるホームページ のガイドライン変更】

平成30年2月28日の第60回社会保障審議会医療部会が医療広告ガイドライン(仮称)を参考資料1-2として発表しました。そのなかで次の項目が注目されています。

医療法等の一部を改正する法律(平成 29 年法律第57  号)により医療機関のウェブサイト等についても、他の広告媒体と同様に規制の対象とし、虚偽又は誇大等の表示を禁止し、是正命令や罰則等の対象とすることとした。

ウェブサイト、ホームページが規制の対象となりました。従来は医療機関のホームページは広告規制の対象ではなかったのですが、近年の誇大広告による医療事故などを受けて宣伝メディアとして扱われます。

さらに「一定の条件の下に広告可能事項の限定を解除することとしている」。過去において医療機関がウェブサイトで誇大広告をしたことを禁止の対象としておりますが、通常の医療機関では自費診療や美容整形を主としていなければ、対象にはほとんどならないものと考えます。

そのときに上記ガイドラインの中の第2の広告規制の対象範囲で広告定義①の誘引性があることが広告であり、その意図がなければ広告とは見なされないことに留意する必要があります。(この考え方は先日行われた改正医療法広告規制の説明会と同じ内容のようです)

 【人材確保と院内コミュニケーション】

人材確保や院内コミュニケーションの改善は広報担当者の直接の役割ではありませんが、経営方針に沿った院内広報はこれらの業務を支える側面があります。広報のご担当者から病院経営者への適切なフィードバックは職員獲得経費低減患者獲得組織力(チーム力)強化に有効です。

人材確保は病院経営において優先度が高い事項ですが、一般的にはあまり工夫が見られません。その結果、応募者獲得費用を低減することが困難になっています。応募者の就活行動をよく分析して、自院の採用推進を図ることがポイントです。問合せ後、面接まで進まない、または採用に至らないことが多い場合には、原因と課題の究明が重要です。

院内コミュニケーションで経営方針が各職員に正確に届くことによって、業務が円滑に推進されるだけでなくチーム力強化につなげることを目指すことができ、その結果として患者サービスが改善して安定した経営を目指すときには必要です。

参考:デジタルと広報戦略2017年  新しい患者像と広報の潮流

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