本稿は医療機関がソーシャルメディアを使用するにあたり、円滑で効果的な運用をするためのポリシー(ガイドライン)を作成の参考にするためのものです。
ソーシャルメディアが普及する過程において、ソーシャルメディアで発信した情報に周囲が強く反応してメディアに前向きに取り上げられたり、失敗を指摘された、いわゆる炎上につながるケースもありました。そのことで医療・福祉関係者の間で、ソーシャルメディアの利用は及び腰になっていることが見受けられます。
ソーシャルメディアはスマートフォンなど情報技術の進化により、既に49歳以下では50%の利用率であり今後ホームページ同様にさらに浸透していくメディアです。職員や関係者がソーシャルメディアでのコミュニケーションツールを使用する際に業務内容を定めた文書でリスクを未然に回避するばかりでなく、デジタルメディアでより自院の立ち位置を明確にして職員や患者が情報発信することで多くの患者の認知を得、また職員の理解を促進し効率的な運用にするためのツールであることの理解が必要です。
●ソーシャルメディア・ガイドラインの意味と目的
ソーシャルメディア・ガイドラインは医療においてどのように使うのでしょうか。近年ユーザーが増え続けているFacebookやLINEなどソーシャルメディアをマーケティングに使用することで、患者へのリーチを拡大する効果が期待される反面、明らかに間違った発信内容で経営を脅かす場面が見受けられました。
医療機関は経営方針として適切な医療提供共に患者や住民との信頼感を醸成していくことです。近年はさらに患者同士のコミュニティーは疾患に関する情報共有や経験の共有にも効果を上げています。一方で職員に経営方針を理解させることが目的もあります。
このような観点からソーシャルメディア・ガイドラインの最初の目的は患者住民・職員とのコミュニケーション改善、信頼関係構築であるべきです。
は運用に対するルールや心構え、目的、姿勢などを明らかにすることにより、リスクを回避し、問題が発生したときにはすみやかに対処できるようすることです。ガイドラインは初めて利用する人でもわかりやすい説明で、院内や関係者全員が理解する必要があります。
さらに、正しい利用方法で積極的な利用をすること推奨するものでなければなりません。単にソーシャルメディアの利用を抑制しようとする意図の内容に陥りがちですが、ガイドラインは禁止事項の羅列であってはなりません。
ソーシャルメディアと言っても、日常の患者や職員との対応と全く同じです。相手への敬意と丁寧な対応が基本です。従って相手(不特定の人)が心象を悪くするような内容であれば、ソーシャルメディアでも決して発信または対応はするべきではありません。
●医療機関が注意する点とは
ソーシャルメディア・ガイドラインを策定する際に、医療機関が注意しなければならないポイントがあります。
ガイドラインの対象は職員(病院業務、私用に分かれます)と患者等ステークホルダーに分けられます。職員の利用は「所属する医療機関に関係が無い自分の意見」ことを明記することが必要です。
ガイドラインの適用範囲は業務においては、発信する情報の範囲、情報元の制限をかける必要ががあります。特に医療機関を利用する人が院内の施設や他の利用者を撮影することを禁止することが必要です。もちろん職員が利用者を撮影するのは、業務を除いて不可とします。
反面、玄関で看板の前で写真撮影するなどは推奨することも必要です。
これらは職員に周知し教育を徹底することが必要です。また理念を参照しながら矛盾が生じないように確認しておくことが必要です。
ガイドラインを策定する際は、過去の事件の事例とソーシャルメディアを自ら利用してどのようなものか経験してみる必要があります。利用経験が無いと、全体的に禁止事項の一覧になってしまうことがあります。管理者こそ、体験してみることをお奨めします。
【ソーシャルメディアポリシーを公開している医療機関の参考事例】
すでにソーシャルメディア ポリシーを発表している医療機関を少しまとめました。
聖マリアンナ医科大学
基本的考え方、守秘義務、法令等の遵守
順天堂
http://www.juntendo.ac.jp/pr/policy.html
利用ガイドラインについて
ソーシャルメディア公式アカウント一覧
日本赤十字社
http://www.jrc.or.jp/sns_guide/
国立がん研究センター
http://www.ncc.go.jp/jp/privacypolicy/index.html#04
Mayo Clinic(米国)
職員向けソーシャルメディアガイドライン
●ソーシャルメディアポリシーの策定方法
American Hospital Association(AHA)
【策定する担当者は】
広報室、マーケティング部などの部署が中心となって、ヒアリングを基に作成を進めます。さらに院内で検討する必要もあります。院内全体を熟知している総務などの確認を取って、部署を横断してプロジェクトとして推進することが必要です。
【ポリシー・ガイドラインに盛り込むべき内容】
基本事項として下記の項目を推奨します。
- 医療機関がソーシャルメディアを使用する目的
- 職員が業務でソーシャルメディアを利用する場合
- 職員または患者住民なのか対象を明確に
- 事実であること
- 患者に貢献する内容
- 患者や医療関係者を励ましている
- 患者や医療関係者に必要(参考になる)なこと
- 患者や医療関係者への思いやり
- 他院や医療関係者に対してのネガティブな投稿の禁止など
さらにソーシャルメディアを利用するか否かは別として、一度発信された発言はインターネット上に残り、削除できない情報となることなどソーシャルメディアのリテラシーを高めておく教育が必要です。
これらはソーシャルメディアを利用していない医療機関でも関係が無いのではなく、ソーシャルメディアでは記事は知らないうちに出ており、アクセスが無いと第三者から指摘されるまで把握していなかったということが起きることも知っている必要があります。
参考まで、インターネットコンテンツ審査監視機構では「ソーシャルメディアポリシー策定の手引き」として公開しています。
http://www.i-roi.jp/download/2011/10/ver10.html
上記に関する質問は こちらへメール または Twitter @byoinkoho?までご連絡下さい。