ペイシェント・ジャーニー(Patient Journey)と病院経営

患者との接点における体験を最適化するためのコミュニケーションデザイン・ツール

弊社は医療病院広報・PRなどマーケティング支援サービスを患者のニーズ・接点とプロセスを分析し各患者のペイシェント・ジャーニー「 Patient Journey 」に対応する効果的な広報・PRを提供しております。

近年ペイシェント・ジャーニー「 Patient Journey 」の必要性について、製薬企業だけでなく医療システムを提供する医療機関において認識されています。ペイシェント・ジャーニー「 Patient Journey 」の背景について考えてみました。

患者満足を向上させ、納得する医療を提供するうえで過去に次のような言葉が使われて来ました。

  • 患者志向の医療
  • 患者視点の医療
  • 患者中心の医療
  • 患者主体の医療

これらは病院経営理念の中でも使われていますが、その具体的内容については明確な定義、プロセスやゴールは明示されていません。従ってイメージはできますが、具体的に経営及び広報・PRに落とし込むには課題があります。

例:厚生労働省
現在厚労省が進めている 医療制度改革の基本的方向 は利用者の視点に立った効率的で、安心かつ質の高い医療の提供」に必要な「医療の選択に資する情報の提供の推進」とありますが、利用者の視点、その目的は何でしょうか?

患者に医療を提供する時にペイシェント・ジャーニーは患者が健康な時点から、罹患後の検査や治療、そして終末期までのプロセス(旅路に例える)およびそのときの医療的、心理的、経済的行動、社会的な患者体験(Patient Experience)への対策を検討することができ、患者の理解や治療への参加する気持ちを高めるツールとしてあります。さらに医療提供側にとっては、ペイシェント・ジャーニーは患者を理解し、円滑な意思決定を得る時や具体的な施策を検討するときに必要です。

特に病院のシステムや枠組みを考えたり、働き方を考えるときに医療機関の都合を考えると一方的なものとなり患者とのコミュニケーションがうまくいかないことがあります。この場合はさらに生産性は下がってしまいます。

すなわちペイシェント・ジャーニーはマーケティング・PRの視点というよりは医療・介護関係者が患者の情報を共有、円滑な意思決定をもたらすことで患者の信頼獲得と生産性向上を目的とするツールです。具体的にはペイシェント・ジャーニーは病院の全ての部門の患者との接点(直接の応対のみならず広報のように間接的な対応を含む)を検討し解決を推進します。

例えば患者との接点で、良い患者体験(ペイシェント・エクスペリエンス)を提供すれば、患者満足度だけでなくエンゲージメントも得られます。そして必要な全ての医療情報、病歴、社会歴、家族歴、薬歴や個人の好みなどの情報が得られれば、患者との信頼構築・満足度向上の改善に向けて必要情報を発信・提供することが可能となります。

そして想定されたペイシェント ジャーニーによって患者エンゲージメント(Patient Engagement)を獲得から発展して病院の良い口コミを発信する「病院大使」になることが目的です。即ち患者中心の医療を提供するうえでも有効なツールと考えられています。

製薬企業や医療機器、医療材料企業も同様に直接患者と関わらなくても、患者とのエンゲージメントを高めることで医療従事者の認知が向上します。さらにペイシェント・ジャーニーを経営戦略に入れることによって、認知だけでなくマーケティング上の優位を得ることが可能です。

ペイシェント・ジャーニー(Patient Journey)と広報・PR

病院広報2016患者生活3s

さてペイシェント・ジャーニー(Patient Journey)はマーケティング・広報・PRにおいてどのような意味があるのでしょうか。

ペイシェント・ジャーニー(上図参照)は患者が病気を告知されたときから終末期、看取り、または完治までに患者が体験(Patient Experience)する医療提供者とのすべての接点を旅に例えた名称です。各患者を心理学的、経済学的、社会行動学的にとらえることで、そのときに医療提供側が必要な情報や医療を提供することで信頼され、患者の選択や意思決定を円滑にすることを目指しています。

しかし、調査レポートによれば、多くの医療機関や製薬企業においてペイシェント・ジャーニーが活かされておらず、患者のインサイトは捉えられていないとされています。

患者の意思決定を促すためにヘルスリテラシーを高めるだけでなく、同時に患者エンゲージメントを得る枠組みを構築してくことが不可欠です。このことが具体的に患者の行動変容を促すことになります。患者エンゲージメントといっても患者は可能な限り自身で判断しますが、それができないときには直ぐに医師に相談できるような関係です。

そのためにホームページを中心とするデジタルメディア、例えばTwitterやFacebookなどのソーシャル・メディアの利用が不可欠となります。

広報・PR担当者が適切な時宜にかなった情報を患者に提供することで、下記のような効果が期待できます。

  • 認知度の向上
  • ヘルスリテラシーの向上
  • 信頼の構築
  • アドヒアランスの向上
  • 患者の意思決定支援
  • アドボケーターとして応援
  • 患者満足度向上とエンゲーメント向上
  • 患者及び全ての関係者間のコミュニケーション改善

ペイシェント・ジャーニ―は上述のように一言で言えば、

患者の受療行動と医療の関わりを視覚化し、分かりやすくしてアウトカムとペイシェント・エンゲージメントを強化するものです

正しいペイシェント・ジャーニーを作ることは、単にアウトカムやペイシェント・エンゲージメントが向上するだけではなく提供する医療サービス・製品に応じた患者の受療行動や行動心理を深く理解することができます。さらに患者だけでなく関連するすべてのステークホルダーにソリューションを提供できます。

【対応方法】

現在はホームページのアクセスデータを始めとして経営データ、患者の苦情情報、組織の部門間のコミュニケーションなどのビッグデータと分析からペイシェント・ジャーニーを予測しデザインすることができます。単に患者をカテゴライズするのではなく「それぞれの患者」の要望に対応しようとするのがマーケティングにおけるペイシェント・ジャーニーです。

即ち患者がホームページの情報を見るときに、メニューや検索機能を使って必要な情報を探します。ここで患者が使用した検索キーワードから何を求めているかが推測されます。ホームページに記載された情報に満足すれば、そこから医療機関に電話をかけたりメールで問い合わせをしたりします。このように患者の行動変容を促すような情報を提供することで、より確実に自院を利用する患者に届くようになります。

このようなプロセスを経て患者は医療機関に関心だけでなく愛着を持つことになり、さらに満足度は改善されます。受診結果が予測したものと同じであれば、患者は医療機関に高いロイヤリティーを持つことになり継続的な受診、および円滑な関係構築が可能となります。

患者が医療機関のサービスを通した体験で、医療サービスに興味・関心をもち、愛着や信頼を醸成する仕組み構築が可能になり、さらには患者が医療・福祉機関への信頼を持つことでより積極的に治療に加わることで信頼関係の強化ができます。
このツールは病院広報・PRのみならず病院関係者が患者へのサービスを考えるうえでも寄与します。

さらにペイシェント・ジャーニーは高い患者のロイヤリティ(治療継続や積極的な伝道師役)や高い生産性を目指すために、データ分析、IoT(Internet of Things)、AI人工知能、ウェアラブルデバイスなどの導入を促進することで広報の自動化や効果的な運用が検討されています。

このように書くと、理想論とする考え方も出てくることも理解しています。しかし上記の内容を一人で受け止めるのではなく社会、または組織で取り組むことで実行に移せます。すでにメイヨー・クリニック(米国) クリーブランド・クリニック、ジョーンズ・ホプキンス大学をはじめとする医療機関では始まっており成果が上がっています。

【ペルソナとペイシェント・ジャーニーの違い】

マーケティングにおいて「ペルソナ」が必要だと言われて久しいですが、医療関係ではまだ浸透していません。ペルソナは医療機関関係者が患者(または採用時の看護師・医師)の人物像(経歴・思考など)を理解することで医療機関との距離感が少なくしようとしています。患者がこのような情報に触れた時には、自分毎化しやすく、短時間に関心が高まります。

ペルソナとペイシェント・ジャーニーの違いは治療や療養の場面での患者体験(ペイシェント・エクスペリエンス)を積み重ねることによって、ペイシェント・ジャーニーは進んでいきます。ペイシェント・ジャーニーは患者の状態を時間軸と行動心理学的な縦軸での変化を合わせて検討できるツールです。ペルソナはペイシェント・エクスペリエンスの中のプロセス上の接点(場面)での患者がどのように行動するかにフォーカスしています。

【最後に】

ペイシェント・ジャーニーにおける患者とのコミュニケーションは、医療機関に来る前から始まっています。さらに診療を終わっても継続している状態ですので、従来の病院広報の対象よりも広くなります。このように患者との情報のやりとりを継続することは患者に差別化する理由を提供することにつながります。

製薬・医療機器など医療関連企業にとって既存の製品サービスの延長線上の製品・サービスからのブレークスルーを探し、展開する上でマーケティングだけでなく営業部門、サービス部門のとの連携を企業のコミュニケーション・エンジンとするうえで重要です。これらから製品・サービスを強化することも可能です。

更新日2020/3/31

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